温森おかゆの雑文倉庫

主にTRPGについての個人的集積。

2025/3/10ケダモノオペラ【いさましいチビのホウキ】

 ケダモノオペラシナリオ集、第1弾『人の朝、獣の夜』掲載の【いさましいチビのホウキ】のセッションに参加させていただいた。ケダモノオペラとしてはちょっと毛色を変えた明るめのシナリオなので、箸休めにちょうどよい。

 明るめのシナリオだと聞いていたため、今回は能天気でお節介な性格のミミルズクを作成。狭い場所に頭をつっこんで観々角(みみづの)が折れてド忘れしてしまったり、コレクションにしようと街で買い集めていた品物が、子供向けアニメばりに吹っ飛んだ拍子にぜんぶ壊れてしまったり……ケダモノオペラでやってみたかった、派手に黒焦げになっても平気な人外だからこそのギャグテイストの展開がプレイできて大変満足である。

 

 今回のケダモノは、同卓したPLのうめおさんも私も同じく異説特技を使用せず、デフォルトのケダモノを使用してプレイした。

 

◆ケダモノオペラとは

 プレイヤーは永遠を生きる強大な“ケダモノ”となり、人や世界との関わりを描いていくナラティブ系TRPG

 ルールは至って簡単で、魅力的な人外がたくさんいるので、脆弱な人間と関わり合う人外ロールプレイがやってみたくなったときにオススメのシステムである。

 このシステムでは、判定や特技を使ったときなどに〈予言〉というものを入手する。プレイヤーはこれを上手くロールプレイに組み込んで、演出していくことで物語を紡いでいく。ナラティブらしく、自分のケダモノがどのような結末を辿るのか、自由に描き出すことができる。

 

◆イントロ

舞台:魔法のある世界。産業の発展の裏で、ホウキに乗った魔女たちが息づいていた頃……

 

 むかしむかし

 

 あるところにホウキが1本ありました。

 ただのホウキじゃありません。

 魔女がまたがる魔法のホウキ。でも使うのは見習いだけ。

 一人前になってしまえばお役御免。華々しく活躍する持ち主をよそに、宝物庫で埃をかぶるばかり……。

 これでおしまいなんて、あんまりです!

 もう一働きするためにホウキは新たな持ち主を探す旅に出ます。

 この旅にはケダモノの助けが必要です。

 

◆ビブリオ PL:おかゆ

ケダモノ種:ミミルズク

 お節介だがデリカシーがないミミルズク。物知りで、知っていることは何でも教えたがりなサガが文字通り人間に災いすることがままある。教えてはいけない禁呪を人間に教えてしまい、結果的に人間の国を滅ぼしてしまったという過去を持つ。その時に賢者にこっぴどく怒られたので流石に今は反省しているが、お節介で節操のない言動は相変わらずで、行く先々でトラブルを起こす。

 関わるとロクなことがないトラブルメーカー。自分でもロクな目に遭わないが、自分がロクでもない目に遭っても懲りた様子はない。そのトラブルメーカーぶりは、今回、ジェマルさんのような寛大なケダモノでなければ付き合っていられなかった可能性すらある。プレイヤーも若干……反省はしている。後悔はしていない。

 

◆ジェマル PL:うめお

ケダモノ種:マンドラバラ

 シナリオが始まる時まで、永い永い休眠期を過ごしていたマンドラバラ。眠る以前、疑似餌(ぎじえ)が大切に想っていた人が自分の本体であるマンドラバラに捕喰されたことで絶望し、いわゆるふて寝(休眠期)に入っていた。

 ビブリオとは休眠以前からの関係で、大切な人を捕食して生まれた子供を人に託す時、ビブリオの知恵を借りたのが始まり。

 トラブルメーカーであるビブリオの起こすトラブルに巻き込まれている自覚がない、天然なところがある。魔女に「大変だね」と同情されてしまうほど。

 マンドラバラは、本体と疑似餌の心の乖離(かいり)があるという、ある意味珍しいケダモノ種だ。疑似餌は本気で人を愛するが、本体はやはり人喰いのケダモノで、疑似餌の愛した人を喰らってしまう。

 人喰いのケダモノの疑似餌が、本気で人を愛してしまうのは、ケダモノとしての欠陥なのか、それとも、それ自体がケダモノの本能に組み込まれた、何かの摂理なのか……それは、おそらくケダモノのみぞ知る所なのだろう。

2025/2/22アンサング・デュエット【微睡みに落つ、君は】置きレス卓

 前回、【ジャンキーズ】で共演した悪魔と聖職者のペアの継続が叶った。

 今回のシナリオでは、キャラクターシートの片隅に小さく書かれるに留められていたシフターとバインダーの過去の掘り下げがなされ、知っているキャラクターの新しい一面を見つけて、大いに楽しむことができた。キャラクターの設定の掘り下げを見るのは、知っているキャラクターでも新鮮な気分を味わえるようだ。

 今回のペア、クロイツさんとヘリオンは、私の中でも特に好きな組み合わせだ。ケンカばかりの凸凹コンビとして始まったが、確かな絆を育んできたふたりである。こういった、ケンカをしながらも仲が良い絶妙な関係は、すり合わせをしてもなかなか生み出せないものだ。このペアを一緒に作ってくださったつぎのさんには、感謝しきりである。

 

 また、今回、つぎのさんの卓で異界対策室の指令タイプのキャラクター、阿部 神戸(あべ こうべ)室長に並ぶ新しいNPCとして、万慧(ばんけい)騎士団に属する教会の統括者“ジョン・ドゥ”が登場。

 クロイツさんの育ての親にして、彼を弩級のカタブツに仕立て上げ、強い洗脳を施したマスターである。万慧騎士団の理念のためなら、悪魔も自分のカワイイ教え子たちも利用してみせる、ゾッとするような合理主義者。表向きは聖なる教会の裏側の闇を映した本質の体現者、と言う感じだ。

 人を導き、救うはずの教会の統括者が、清濁(せいだく)併せ呑むサイコパスじみた合理主義者というのは……背筋が寒くなると同時に、キャラクターの深みに魅力を感じる。

 

◆『アンサング・デュエット』とは

 現実と隣り合わせの危険な世界、“異界”。その真の姿を見抜く目を持ったシフターと、そのシフターを異界から助け出すバインダーとなり、異界からの生還を目指すというシステム。

 ルールは至って簡単で、短い時間で濃厚なうちよそを楽しむことが可能。

 キャラクターは[フラグメント]という6つのリソースを持っている。これはその人をその人たらしめる特徴や性格などの要素を表していて、異界の影響を受けるごとに、このフラグメントが別のものへと[変異]していってしまう。

 隣に居る大切な人が、だんだんと自分を見失っていく中で、ギリギリのところで異界に抗う。そんな緊迫感が、ふたりの絆を深めるのである。

 

◆シフター:クロイツ・ハルトマン GM:つぎの

「あの時、自分は死にたくありませんでした。だから、必死でしがみついた」

「貴方が、自分を連れ出すと言ったのですぞ。此処ではないどこかに」

“強くあらねば”。生みの親を知らず、教会だけが居場所だった彼は、教会の教えに忠実だった。寧ろ、必死でしがみついていたと言ってもいい。自分に与えられた、教会という名の居場所にしがみつき、内心の疑問や外への羨望(せんぼう)を隠し、目を逸らしながら、超絶弩級のカタブツとして生きてきた。

 だが、それはいつしか心の綻びとなり、彼は自分の持つ禁書に封じられていた悪魔、ダンタリアンの手によって異界に取り込まれ、深い眠りに落ちてしまう。

 

◆バインダー:ヘリオン PL:おかゆ

「勝ち続けなくたっていい。強くなくたっていい。“相応しく”なくたって、いいじゃねーか。俺はそんなの、お前に求めたりしない」

 軽薄で尻軽な男のサキュバス。だがその実、隠し切れない面倒見の良さと兄貴肌な性分を持つ。

 クロイツでは払えず、定期的に精力を貰うかわりに、クロイツ以外に手を出さない契約を結んだ。そのため、日常的にクロイツと行動を共にし、悪魔でありながら聖職者の端くれに擬態(ぎたい)して教会に籍を置いている。結果的に、クロイツが異界に巻き込まれたとき、一緒に巻き込まれるか、助け出す立場になる。

 過去の自分を映す異界にて、自分がかつて天より堕ちた天使だったことを思い出す。過去の自分の過ちに嫌悪感を抱きつつも、過去があるから今のクロイツとの日常があるのだと受け入れ、クロイツを導いて異界から脱出した。

 

↓前回のシナリオ【ジャンキーズ】の感想

nukumori-okayu.hatenablog.com

2025/2/8アンサング・デュエット【インバース・ワールド】

 人づてに教えてもらったのだが、KADOKAWAへのサイバー攻撃でダウンしていた富士見書房の公式ページ、「TRPG ONLINE」が、満を持しての復活となった。

 ここにはストリテラや銀剣のステラナイツといったどらこにあんのシステムや、デッドラインヒーローズのダウンロードコンテンツが充実していたのだが、KADOKAWAサイバー攻撃を受けて、今の今までダウンし続けていたのだ。

 その間に、どらこにあんやからすば晴さんなど、いくらかの公式は外部のサイトにQ&Aやエラッタ、各種ダウンロードコンテンツを移動させるなど対応してくれるところもあった。だが、デッドラインヒーローズに関しては、公式が動かなかったために、長らくサポートページを見られなかった。この富士見書房公式ページが復活したことで、キャラクターシートやサンプルキャラクターシートなどのダウンロードコンテンツが、やっと正式に再開されたのである。

 富士見書房の公式ページの使用感が懐かしい。富士見書房公式ページにお世話になっていた人は、一度開いてみてはいかがだろうか。

 

 閑話休題

 

 継続キャラクター向けのシナリオであることもあって、今の今まで回せていなかった【インバース・ワールド】。

 これは、アンサング・デュエット特有の「同じペアで継続しシナリオをやろうと思ったら、必ずシフター役がGMになることが確定する」という問題を解決し、バインダー側のプレイヤーがGMをすることを可能にしたシナリオである。

 全てが反転される世界の中で、足を踏み入れたバインダーと、シフターの立場も反転する。つまり、シナリオギミックで最初からバインダーがシフターに、シフターがバインダーに、単純に役割が入れ替わるというシナリオなのである。

 立場が反転してしまったことで、慣れない感覚に戸惑ったり、これまでの相手のバインダー(シフター)としての立場を初めて痛感したりといったロールプレイが楽しめた。

 

 今回、前回の高難易度シナリオ【アンブロークン・アロウズ】で忘却したフラグメントの持ち込みがあったため、今回は「変異への抵抗」ダイスに色を付けた。これは、つぎのさんのやり方に倣(なら)わせていただいたものである。

 ふたりで楽しむために、工夫できるところは工夫する。そういった思考の柔軟さは、私にはない。つぎのさんの『アンサング・デュエット』のGMの仕方は、非常に参考になる。

 ロストが苦手な人に対しては、変異への抵抗ダイスに少し色を付けるのも、考えても良いかもしれない。ダイスで最低値を出しても、次回のシナリオに忘却していないフラグメントを6つ持ち込める程度に抑えられるくらいが良いだろう。

 

◆アンサング・デュエットとは

 現実と隣り合わせの危険な世界、“異界”。その異界の真の姿を見ることのできる力を持つ“シフター”と、そのシフターを異界から助け出す立場の“バインダー”のペアで、さまざまな姿を持つ異界を進み、脱出を目指すTRPG

 キャラクターのデータは簡潔で、“フラグメント”という、その人をその人たらしめる要素をリソースとして扱うことになる。フラグメントは、異界の影響を受けるごとに別のものへと“変異”していってしまい、そのたびに、その人らしさを失っていく……といった展開が緊迫感(きんぱくかん)を生む。

 簡単なルールだが、それゆえに拡張性が高く、リソース管理はシビアなことも。変異していくキャラクターに一喜一憂しつつ楽しめる。

 

◆あらすじ

 そこは、ふたりの“在り方”までをも変えてしまう、危険な異界。

 異界の核となっているアーティファクト「反転玉」を回収する任務を受けたふたりは、時、空間、法則性を失った世界に迷い込む。

 何もかもがあべこべなその世界では、バインダーがシフターとなり、シフターがバインダーとなる。

 

 新しい感覚。変わる関係。一歩進む事すら困難な場所を乗り越えるための力は、もはやふたりの絆だけだ。

 

◆バインダー(前回のシフター):鬼本 零士(おにもと れいじ) PL:つぎの

「犬神クン、キミのその《正義感》を、恨んだのは今日が初めてだ」

「『もし、駄目だったとしても』などという……キミの仮説なんて否定してやる……なぜならそれが、キミが私に見せ続けてくれていた、バインダーとしての在り方だからだ」

 ただただ「バインダーとシフターの立場が反転する」というだけのシナリオだが、その設定を拾って素晴らしいロールプレイに昇華するのは流石、歴戦のつぎのさんらしい。

 立場が反転することで起こる戸惑いや葛藤をロールプレイに反映するというスゴ技を披露する。

 異界に迷い込む直前に、「“見えない”って、どういう感覚なんだ」と、バインダーの花鶏(あとり)に問いかける“伏線”から、異界に迷い込んで立場が反転したことが発覚する時の伏線回収まで、流れるようにやってみせる。計画書か、台本でもなければなかなかできることではないのではなかろうか?

 これが自然とできてしまうのは、いつもながらこの人特有のクオリティだと思う。シナリオコンセプトに対する理解度と、それを応用するロールプレイ力が高いのだ。

 鬼本零士は、もともと『アンサング・デュエット リプライズ』に掲載されている公式シナリオ【アンブロークン・アロウズ】で使用した、異界対策室のキャラクターだった。自分を軽んじ、ただ任務遂行のためにすり減っていくシフターの在り方を受け入れていたが、今回の異界でバインダーの立場になり、すり減っていくアトリを見て、そばに居ることしかできないバインダーの無力を痛感する。

 アトリのフラグメントが1つを残して忘却し、ロスト間近になったところで、「異界化」を使用して自分のフラグメントの忘却と引き換えにアトリを救う。シフターだった時は儚げな青年だったが、バインダーになったことで、頼もしい先輩としての一面も垣間見えた。

 

◆シフター(前回のバインダー)犬神 花鶏(いぬがみ あとり) GMおかゆ

「先輩が失ってきた分、私だって……先輩を支えるためなら、できることをしたいんです!」

「自分に何があっても、先輩のことは、守りたい。それは新人のころから、変わりませんから」

 ただ一直線に鬼本を想う、後輩バインダー。今回はシナリオギミックにより、異界の真の姿を見る力を得て、それに翻弄されつつも、頼れる先輩のおかげで無事生還。

 今まで「見えない」ことが当たり前の立場だったためか、シフターになって初めて「見える」ようになって、感覚の違いに翻弄され、終始出目が低迷。ついには最終局面でフラグメントが1つを残してすべて忘却するという状態にまで陥ってしまった。

 自分は全てを失っても、先輩だけは返したいという想いと持ち前の正義感ゆえに、今回の異界ではムチャをしたが、先輩が使った異界化の効果でフラグメントが回復。そのおかげで何とか生還を果たした。

 さて、今回の件で恋心を改めて自覚し、告白したアトリだが、ふたりの関係はこれからどうなっていくのだろうか?

2024/3/23アンサング・デュエット【Tale of a Vampire】

※現在のシナリオ名は【Vampire tale】

 

 一度もやったことのないシステムで、いきなりオリジナルシナリオを作って、回した奴がいるらしい。私だが。

 置きレス卓GM初体験、ついでにシステム初体験と、「初」づくしで縁起のよい卓となった。ついでに私の積みルールブックがひとつ消えた。ありがたいことである。

 プレイヤーのつぎのさんのおかげで、今回の卓は私の主観的な感想からすると大成功に終わった。やはり、いつもプレイヤーのおかげで私の卓は楽しく成り立っていると実感する。というか今回は本当に内容があまりに退廃的なシロモノを作ってしまったので、これを楽しく体験してくださる方がいらっしゃっただけでも、ビッグバン級の奇跡なのではなかろうか。

 

 題名が「吸血鬼物語」なだけあって、プレイヤーキャラクターが異世界の影響を受けるたびに吸血鬼と化していき、隣の片割れを「吸血したくなる」というシチュエーションのためだけに造り上げたシナリオだ。絶対に人を選ぶシナリオだと思うが、作者としては、これが刺さる人には刺さるシチュエーションだと思っている。

 こんなシナリオを受け入れてくださる方がよく見つかったな、と回してみて実感している。プレイヤーの地の文のすばらしさも相まって、甘美で濃厚なヴァンパイアワールドが展開されている。

 変異していく過程はもちろん退廃的なエロティシズムに溢れているが、寧ろ吸血鬼化する方よりも、吸血鬼化したバインダーに触れられることで恍惚感を得るシフターの変異の方がより背徳感を際立たせている気がする。

 今回は流石に詳しいことは言えない程度にお耽美だったが、たまにはこんな背徳的で退廃的なシナリオをするのも楽しい。

 

◆アンサング・デュエットとは

 現実と隣り合わせの危険な世界、“異界”。その真の姿を見抜く力を持つがゆえに、異界に狙われ、迷い込んでしまうシフターと、同じく迷い込み、シフターを異界から助けだす立場のバインダーとなって、恐ろしい世界からの脱出を目指すTRPGシステム。

 うちよそとロールプレイを楽しみたいなら最適のシステムである。

 ルールは簡単だが、リソース管理で頭を使う場面もあり、なかなか楽しめるゲーム。

 キャラクターにはそれぞれ、その人をその人たらしめる要素である“フラグメント”というものがあって、異界の影響を受けるたびに、これが別のものへと変異していく。

 隣にいる大切な人が、だんだんと変わり果てていく過程をドラマチックに描くことができるシステムなのだ。

 

◆あらすじ

 満月の夜、バインダーとシフターは異界の森へ迷い込む。

 鬱蒼(うっそう)とした森で、聞こえるのはフクロウのくぐもった鳴き声、オオカミの遠吠え──。

 頭上に輝く赤い月の光を浴びたバインダーは血への渇望に目覚めていく。隣にいるシフターの流す血に、耐えがたい渇きを覚える。

 敵意ある者がふたりを追ってくる中、バインダーはシフターを護り抜くことができるのか。

 脅威となるのは、“異界”ばかりとは限らない──。

2024/10/16アンサング・デュエット【ジャンキーズ】

 正直、持ち込みキャラがとてもではないがお外に出せない変態悪魔とかいう内容なだけあって、どう感想を書いたものか迷っていた。

 今回は、シナリオの勢いに乗って2回という短時間で終わった。2回だが十分なボリュームと楽しさがあるシナリオだ。

 

 ケンカップルをやるために作られたシナリオで、終始おかしなテンションと、怒涛(どとう)の展開と勢いで進行していく。寧ろ勢いに乗らないと正気に戻ってしまいそうなので、GMが2回で終わらせると宣言したのは、事実聡明な判断だったと思われる。

 ワイワイ楽しみつつ、良質なケンカップルを摂取しつつ、最後にはクソデカ感情を乗せて思いの丈を叫ぶ、ケンカップルのための最高のシナリオ。

 ケンカップルに特化したシナリオのため、興味があればぜひやってみて頂きたい。難易度は高いが。

 

 今回、ド下ネタを吐き散らかす変態悪魔でも良いですか、と、お外では絶対に言えない提案をして、快く受け入れて頂いた。

 私はキャラクターに関して言えば、昔のトラウマもあって少々おカタい観念を持つ方なのだが、今回のシナリオは扱いにくい題材でもある「ケンカップル」をするためのものだったこともあって、どうせやるならできるところまでやってみよう、と思っての提案だった。結果、非常に楽しむことができた。
 もちろん下ネタは、直接的な表現は全部「(自主規制)」に変換するのと(テキストセッションの良いところである)、不快になったらすぐに下ネタをやめるという条件を自分から提示するなど、出来る限りの予防線を張った上で、許可を頂いたのだ。

 まずは相談ありきで、次にコンセプト案を提出し、それに許可を貰って、初めてキャラクターが完成した。

 結果、「十分な相談とすり合わせと、相手を不快にさせないようにする配慮さえあれば、楽しくできるんだ」という、新たな気付きを得ることができた。

 ……とはいえ、十分な相談とすり合わせの時間を取ることと、相手に対する最大限の配慮は難しいものでもあるため、初対面の人を相手にするとき、密に相談できない状況では、この先もここまで特殊なキャラクターは持ち込まないと思う。

 ひとえに、こんなムチャクチャを許してくださったGMのおかげである。

 

◆アンサング・デュエットとは

 ゲームマスターとプレイヤーの1on1か、プレイヤー2名で行う、激重感情とエモーショナルを摂取するためのシステム。

 舞台は現実と隣併せの危険な世界、“異界”。異界の真の姿を見抜く力を持つ“シフター”と、シフターを想い、シフターを異界から助け出す“バインダー”となり、常識の通じない超常の世界からの脱出を目指すものとなる。

 特筆すべきは「フラグメント」というルールで、そのキャラクターをその人たらしめる要素のことだ。これが、異界の影響を受けるごとに別のものに“変異”してしまう。隣にいる大切な人が、だんだんとその人でなくなる状況を濃密に演出できるシステムといえる。

 

◆オプションルール

『アンサング・デュエット リプライズ』に掲載されているオプションルール『秘めごと』に加え、「フラグメント・バレット」のルールをそのまま流用して、シフターのクロイツが使用できるオプションルールが設定される。

 今回、シフターもバインダーも出目が良く、いたって順調に進んだのだが、ギャグだらけの割には判定難易度がシビアで、けっこうタイトなリソース管理を迫られた。このシナリオを、オプションルール無しで回していたら、もっと酷いことになっていたのでは? と思う。

 

◆シフター:クロイツ・ハルトマン GM:つぎの

「ふざけています。……よ、よくもこの様な歯茎の浮つきそうな文言を……世の人々というのは皆こうなのですかな……」

「おや? 奇遇ですな。自分も貴方のことは──」

『アンサング・デュエット リプライズ』P54の「万慧騎士団(ばんけいきしだん)」に属する教会、“聖ミゲル万慧教会(ばんけいきょうかい)”に所属する騎士であり、あらゆる魔物、悪霊、怪異、異界といった魔を祓ってきた無敗のエクソシスト。得意技は、清め塩を浴びせるソルトスプラッシュ。

 教会育ちの超絶弩級のカタブツで、あらゆる誘惑も色香もモノともしない。下ネタには過剰反応を起こす。

 ヘリオンが現れるまでは、エクソシストとして祓えぬものはなかったが、ヘリオンだけなぜか祓えなかったため、苦肉の策で自分の精気を与える代わりに、彼を縛りつけ管理することにした。
 それから、奇しくも一番そばにいるヘリオンが、自分を異界から助け出すバインダーの立場になっていることもあって、いわゆる「腐れ縁」の関係となる。

 ヘリオンと毎日のようにケンカをしていたら、異界に巻き込まれていた。そのままお互い煽り合いつつ異界を進むうちに、ヘリオンの孤独と、自分に対する気持ちに気付き、揺れ動く。

 最後には、晴れやかに思いの丈を叫び、みごと異例の異界深度からの生還を果たした。

 

◆バインダー:ヘリオン PL:おかゆ

「ま、異界にいる以上、俺とお前は一蓮托生(いちれんたくしょう)ってやつだ。イヤでもな。

 そのチンケな本に封じられている“誰かさん”が助けてくれるってんなら、俺は別にいいけど?」

「俺はお前に居なくなられたら、マジにひとりぼっちになっちまうんだよ!!」

 クロイツに縛られ、そのままなし崩し的に万慧教会に従士として所属するようになった悪魔。クロイツに縛られたのが気に入らないが、顔とカラダだけは好みなので、毎日のように相手が嫌う自主規制モノのド下ネタを吐き散らかして、わざと怒らせて楽しんでいる。

 根は明朗快活(めいろうかいかつ)で、あんがい面倒見のいい兄貴肌。
 クソデカデートコースにテンション爆アゲになる程度の子供っぽさも持ち合わせる。

 クロイツと毎日のようにケンカを繰り広げているが、最近は次第にこんな生活も悪くないと思い始めた。クロイツが危険にさらされると、助けずにはいられない。

 本人はとうに忘れ去っているが、黒く染まって壊れた天輪と2対の黒翼を持つことから、悪魔として転生する以前はそれなりの中堅天使だったと予想できる。悪魔として祓えないのは、天使としての残滓を残しているからである。

2024/9/22アンサング・デュエット【アンブロークン・アロウズ】

 入院3日前に、現状最後の卓が終了した。あとは1週間は戻ってこられないが、この思い出を胸にニヤニヤしながら頑張れるくらいには良い卓だった。

 今回プレイしたのはつぎのさんGM、『アンサング・デュエット リプライズ』掲載の高難易度シナリオ、【アンブロークン・アロウズ】。しょっぱなから高い難易度の判定が襲い来る、どらこにあんの殺意が垣間見えるシナリオである。

 特殊ギミックを活用し、リソースを温存、やりくりしつつ、中間までは危機感すら覚えたが、結果的に両者生還。恐ろしい世界から、辛くも生還を果たし、ふたりの絆も深まった。

 高難易度のシナリオの何が良いって、ヒリつけばヒリつくほど仲間が愛おしく思えるのだ。吊り橋効果というやつだろうか。
 今回、先輩を支えたがる犬系後輩をプレイしたが、最終的に先輩への恋心が勝手に生えてきた。
 クーデレ先輩×犬系後輩はいいぞ。

 

◆アンサング・デュエットとは

 現実と隣り合わせの危険な世界、異界。その真の姿を見抜く特殊能力を持つがゆえに、異界に取り込まれやすいシフターと、そのシフターを異界から助け出すバインダーとなって、危険な場所からふたりで脱出する物語を描く、どらこにあんのTRPGシステム。

 プレイヤー人数は1~2人までで、GMとPLの1on1か、プレイヤーふたりまでと定員は少なく、難易度はゆるめ。シナリオに登場するPCも必ず2人までと、「いちゃいちゃしろ」と言わんばかりの設計である。

 特筆すべきは、その人をその人たらしめる要素を表す6つの“フラグメント”と、“変異”のルール。シフターとバインダーは、異界の影響を受けるたびに、自分の身体や精神が別のものへと「変異」していく。

 CoCの発狂のルールや、エモクロアの共鳴のルールが好きな人は楽しめるだろう。隣に立つ大切な人が、もし変わり果てていってしまったら……? これはそんな中で、支え合うふたりを演出するためのシステムである。

 

◆バインダー:犬神 花鶏(いぬがみ あとり) PL:おかゆ

 異界を調査、対策する、警視庁異界対策室の新人女性警察官。
 底抜けに明るく前向きな性格で、困っている人は放っておけず、たとえ目立たないことでも人の助けになれるのであれば懸命に取り組む、まさに異界対策室におあつらえ向きなキャラクター。

 バディが決まって異界対策室のエージェントとして正式配属になるまでは、シフターの“鬼本 零士(おにもと れいじ)”のもとで教育を受けていた。正式配属になるとともに、バディが、それまで教官だった鬼本零士その人に決定。アトリは恩返しができると喜び、鬼本というシフターを支える決心を新たにするのだった。

 終始、出目が低迷していたあたり、ある意味後輩らしい。だが、持ち前の正義感と後先を考えない勇気ある行動で、一般人や仲間を助け出す。

 

◆シフター:鬼本 零士(おにもと れいじ) GM:つぎの

 異界対策室のエージェント。
 異界対策室の設立からずっと活動してきた古参のエージェントであり、「自分」というものに執着せず、忘却でフラグメントを失っては、新しい「自分」を構築することで、感情や表情、記憶を失いながらも、活動を続けていた。

 きわめて冷静、そして冷徹な青年。その性格を表すように、その肌は氷のように冷たく、周囲には冷気を纏(まと)う。
 異界に影響を及ぼす装備である“フラグメントバレット”を使用する際、弾丸は異界を凍らせる。

 アトリとは別の形で、ストイックな性格であり、特に異界において一般人の救助にあたる際には、とても厳しい態度をとる。

 後半になると出目が高くなる、非常に頼もしい先輩。先輩の判定成功がなければ、もう少し厳しい状態での帰還になっていたことだろう。

 

NPC

◆阿部 神戸(あべ こうべ)

 警視庁異界対策室の室長。
 鬼本と同じく、異界対策室の設立に携(たずさ)わった初期メンバーのひとりであり、今は室長室の椅子に座って、エージェントたちに指示を出す役割を担っている。
 異界で受けた変異によって、見るたびにその姿が「変わって見える」。時には妖艶(ようえん)な女性、ある時は銀のオールバックに胡乱(うろん)な笑みを湛えた、初老の男性。しかし、姿は変われど、なぜか見る人は阿部を阿部だと認識するので、仕事に支障はない。

 常に飄々(ひょうひょう)とした性格で、殉職(じゅんしょく)、引退の多い異界対策室において、残酷とも言える決断を平気で下す人物だが、心の底では部下への心配と思いやりが共存している、清濁(せいだく)併せ呑む人物。

 鬼本とアトリの上司として、ふたりを茶化しつつ、ときに異界に立ち向かうための情報を外部からもたらしてくれる。

2024/3/30アンサング・デュエット【過去へ捧ぐ鎮魂歌】置きレス卓

 今回のシナリオは、相手に隠し事をしている人が異界に迷い込み、次第に秘めた記憶や思い、隠している相手のことを忘れていってしまうというものだ。

 隠している記憶そのものではなく、秘めた想いを告白できない相手(バインダーorシフター)のことを忘れていくという、異界らしい悪意の塊である。

 回してみた結論、やはり表面からは見えない「記憶喪失」の変異の扱いは難しいと感じた。テストプレイにお付き合いくださったプレイヤーが上手すぎて、大した問題になっていない。

 それにしても、プレイヤーさんの、シナリオの中の描写を取り入れてかっこいい演出に昇華するプレイスキルには本当に驚かされる。アレはマネできない。流石のアドリブ力だ。

 

 今回は26日から始めて、4日で終わるというハイスピード卓となった。置きレス卓でこれだけスムーズ、ハイスピードなのはなかなかないだろう。ご協力いただいたプレイヤーさんには頭が上がらない。

 

◆アンサング・デュエットとは

 現実と隣り合わせの危険な世界“異界”の真の姿を見ることのできる能力を持ったシフターと、そのシフターを異界から助け出すために奔走するバインダーとなって、ふたり一組で脱出を目指す、どらこにあんのTRPGシステム。タイマン、うちよそ要素をそのままシステムにしたようなシロモノである。どらこにあんはうちよそが大の得意だ。恐らく。

 キャラクターシートや判定、ルールも簡潔ながら、リソースの管理は慎重にやる必要があり、なかなか楽しめるようにできている。

 プレイヤーキャラクターは異界の影響を受けるたびに「変異」を受けていく。記憶をなくしたり自分を見失ったり、身体の一部に羽が生えたり異形のものになったりしていく。その過程を“シチュエーション”としておおいに楽しめる人に、ぜひおすすめしたいTRPGシステムである。

 

◆あらすじ

『隠し続けることは、想い続けることは苦しむこと』

『苦しいだけの記憶なら、忘れてしまおう』

 優しくもどこか寂しい、さざ波の音が響く海岸。ふたりで脱出の手がかりを探す。

 しかし異界を進むにつれて、次第にパートナーはあなたのことを忘れていってしまう。それでもあなたは、その手を引くことができるのか。

 

『忘れてしまおうよ』『苦しいだけの記憶なら、最初から無かったことにしよう』

 それは悪意なのか善意なのか、誰にも分からない。

 ただ確かに、パートナーとの記憶が抜け落ちていくと同時に、苦しさも薄れていく。

 もしも忘れたくないと願うなら。

 その手を決して、離してはならない。

 

◆バインダー:猫戸 遥介(ねこと ようすけ) PL:つぎの

「きっとさ~。ゆうちゃんは……ずっと俺のこと、守ろうとしてくれてたんでしょ? ……そのことがね、俺、すっごく嬉しい」

「キライになんかなれないよっ……! だってずっとずっと俺は!! ゆうちゃんが好きで……っ」

 小さい頃から幼馴染の結希にずっと淡い恋心を募(つの)らせているが、告白できないまま今に至る。「フツーじゃない」自分の恋に罪悪感を感じて、「忘れたい」と願ったがゆえに、幼馴染と共に異界に巻き込まれた。

 異界のなかで、次第に幼馴染との記憶、自分のアイデンティティを忘れていくが、それでも異界の脅威から幼馴染をクールに護り抜く。普段はのほほんと柔和(にゅうわ)な性格だが、やるときはやるレスキュー隊志望の強さを見せた。

 プレイヤーのつぎのさんは今回も出目強者で、最後まで温存したフラグメント効果を大放出して余裕の生還。

 しかし、変異を回復するダイスは奮わず「1」。アイデンティティと異界でのほとんどの記憶を失くした状態で、幼馴染と帰還を果たした。それでも彼は後悔しないのだろう。その功績に祝福を。

 

◆シフター:一重 結希(ひとえ ゆうき) GMおかゆ

「どちらかが帰れないって分かったら、最悪お前だけ帰す。これは決定事項だ」

「なんで……そんなこと言うんだよ……。なんで、キライになってくれねえんだよ……」

 異界で双子の姉を失くしてから、失うことを恐れて幼馴染である遥介を遠ざけるように厳しい態度を貫き続けてきた。しかし、想い虚しく、ふたりで異界に迷い込んでしまう。

 双子の姉が異界に消えたこと、巻き込みたくなくてつらい態度を取っていたことを告白し、遥介からも気持ちを告白され、ふたりは真に打ち解けた。どれだけ辛く当たっても、遥介は自分を嫌いになれないのだと知って、態度を改め、親友として一緒にいることを決意。

 彼に守られ、異界からふたりでの生還を果たした。異界で手にした遺物を三日月財団に売り、手に入れたお金で、遥介とホテル・クレセントのビュッフェでささやかな祝勝会を挙げる。