温森おかゆの雑文倉庫

主にTRPGについての個人的集積。

2024/3/15ケダモノオペラ【百年にも満たない話】

 セッション回数にして3回とは思えないほど重厚な物語だったということは確かなのだが、感動しすぎて語彙力が足りなくなったというか、筆舌に尽くしがたいというか。

 ともあれ最近、いつもお世話になっているつぎのさんが遊んでくださるというので、チョロい私は近くの書店に売られていたケダモノオペラのルールブックを買って、さっそくお付き合いいただいたのである。すでに体験卓を1回やっているので、これ以上遊ぶなら流石にルールブックを買って遊ばないと、体験ルールでずっと遊ぶのもなんだか悪い気がするから。

 今回は、つぎのさんの体験卓【少年と絵】から、ヤミオオカミの「フェンリル」が続投となった。初めて使ったキャラクターには、やはり愛着が目覚めるものだ。

 

◆ケダモノオペラ

 ダークファンタジー系ナラティブTRPGと言ったところか。強大な力を持ちながら、運命の軛(くびき)から逃れられない人外、“ケダモノ”を演じながら、プレイヤーの望む結末を紡ぎあげていくといったもの。

 難しい判定をクリアするために”特技”を使うと〈予言〉というものを得て、プレイヤーはセッション内の演出でPCの運命とも言うべき〈予言〉の実現を目指しながら進めていく。

 シナリオでどのような結末を選び取るかは完全にプレイヤーの自由ではあるが、〈予言〉の実現をしなければならないために、そこに至るまでの演出は何でも自由とは言い切れない。同卓者との綿密な相談と、何とかかんとかシナリオの中で「実はこうだった」とか「こうだったけど今はこうなった」などのこじつけ力が試される。なかなか噛み応えのあるナラティブだ。
 アドリブが苦手な私は毎度〈予言〉に翻弄されている。

 

◆イントロダクション

“むかしむかし”

 人が剣と魔法を武器に、世界を切り拓いていた頃……

 

 ある時、ケダモノの住む闇の森に、迷子の人の子がやってきました。

 たった5歳の、とても泣き虫の王子さまです。

 ひょんなことからその子を助けたケダモノは、気まぐれか、憐れみか、それとも楽しみや企みのためか、

 彼に「3つ」だけ欲しいものを与えてやることにしたのです。

 それは、80年近くにおよぶ奇妙な縁となりました。

 ケダモノにとっては、まばたきするほどの短い時間。

 けれど、人間にとっては──

 

 このイントロダクションを見せて頂いた時、私はまず「フェンリルで参加し、体験卓でやった【少年と絵】の前日譚としての話にしたい」と相談し、GMに快くOKをいただいた。
 フェンリルに設定していた“伝説”の「人に憧れた獣」に何か説得力が欲しくて、この伝説が生まれるもととなった前日譚のような形で、今回のシナリオを行いたかったのである。
 結果として、最終幕あたりで私は滂沱(ぼうだ)の如く涙を流して感動することになった。

 GMのつぎのさんは毎回激うまロールプレイで魅せてこられるので毎回唸らされている。

 さてそれでは、感想をつらつらと書いて行こうと思う。

 

フェンリル PL:おかゆ

「冥途の土産に教えてやろう。貴様らヒトを喰らう獣……いま貴様の目の前にいる私が……その“ケダモノ”だ!」

「さあ、お眠りなさい。疲れたでしょう。明日の朝……起きたら、温かいスープを……作ってあげるわね……」

「……フン。好きにしろ。人間のわがままなど……我らにとっては、遊びにもならん……」

 月光の魔力を纏い、時を遡(さかのぼ)る力さえ持つ強大なケダモノ、ヤミオオカミ。
 慈愛に満ち溢れた修道女の疑似餌(ぎじえ)を持つ。なぜか本体と疑似餌の思考は同じでも、ぶっきらぼうな本体と、本体の優しい本心をぺらぺらしゃべる修道女の疑似餌で、言っていることが全く違う。

 最初はシルヴァという人間の魂が成熟するまで待つついでに、ヒマつぶしとして「3つの望み」を叶えてやるという契約を取り付けたが、次第にシルヴァに情が芽生えていく、という過程をたっぷりと楽しませていただいた。

 

◆シルヴァ GM:つぎの

「僕はあなたたちの事、キレイだなって……そう、思うと思うよ。あの時みたいに」

「国を率いる者が気にかかる、……という、気持ちも理解はできる。……けれど、むやみに血を流すこともないだろう、と思っている。我々は、いわば大きなひとつの家族。……内々で口論している間に、滅ぼされては元も子もないだろう」

 ケダモノオペラでヒトを操作したいときのために、PCの種類として“ニエ”というものがある。今回、彼はNPCでありながらPCと共に判定に挑む、GMPCとしても参加した。後半の出目の良さが極まっている。

 ひたむきに国と民を想う、清らかな魂を持つ王子。何より驚いたのは、GMつぎのさんによってシルヴァの生涯通しての立ち絵差分が出来上がっていたことだ。没入感がすさまじい。

「喰おうとするのでギャン泣きしてやめさせてください!」とか、「ただの食い物だと思っていたところから次第に友情を芽生えさせていきたいです!」とか、今回も相当にムチャ振りをしたが、全て難なく実現するGMのアドリブ力には何度も助けられている。

 歳を重ねていくたびに、シルヴァの持つ“伝説”が移り変わっていって、彼の心境の変化を感じられたところも、芸が細かかった。他人ばかり想う彼だったが、その生涯が幸せであったことを祈る。