温森おかゆの雑文倉庫

主にTRPGについての個人的集積。

TRPGシナリオの作り方

 シナリオを考えているとだんだんと煮詰まってきて、それまで考えていたことと考えていることが、どんどん頭の中で混沌と化してきたので、いったん筆を置いて、シナリオの作り方について、備忘録をまとめておくことにする。

 シナリオを作れるのは才能だと、限られた人にしかできない芸当のように言われるが、そんなことはない。「俺の考えたスゲー面白いシナリオ」さえ頭の中にあるのなら、誰でも作ることができる。
 逆に、まず「俺の考えたスゲー面白いシナリオ」は絶対にあなたしか思いつかないし、したがって、あなたしか作れないので、「思いつく」という段階から、もう世界でたったひとつのシナリオが始まっていると言えるのだ。
 そこでシナリオ作りを「才能」で片づけ、ダイヤの原石を埋もれさせてしまうのは、あまりに勿体ないことだと思えないだろうか。

 それでは、以下に、TRPGシナリオを思いついてから、完成まで漕ぎつけるための流れをご説明しようと思う。
 シナリオの作り方は人によって違うため、以下に示したことが正解というわけでもなく、あくまで1例である。読者諸氏には、ご自身のやり方をどうか追及していただきたい。
 それはそれとして、世の中のゲームマスターには、メモ用紙1枚にだいたいの流れを書くだけで、あとは全てアドリブでやってのける人もいるが……素人にマネできるものでも、猿マネしたところで上手くいくものでもないので、あくまで堅実に、「書いて、投稿サイトに不特定多数が読める形で公開できる程度のシナリオ」の作り方を説明する。
 先人は後世にこう残した。「異端を攻(おさ)むるはこれ害のみ」と。

◆思いつく

 まず「思いつく」ことからシナリオ作成は始まる。思いついた「ネタ」というのは、言うなればシナリオの原石だ。これから思いついた本人が磨き、形にしていかなければ、そのシナリオは絶対に生まれない。

 そこで「どうせ私がシナリオなんて書けない」と、思いついたネタをくしゃくしゃに丸めてゴミ箱にダンクしてしまうのは、あまりにも勿体ない。この世界でそのシナリオを思いついたのは、間違いなくあなたひとりで、それをシナリオにできるのも世界であなたひとりなのだ。それを忘れてはいけない。

「でも私が思いついたことなんて、私の前に誰かがやっているはずだし」……と、思わなかっただろうか? その気持ちも分からないでもないが、ではあなたは、その何番煎じか分からないネタでシナリオを書いて、「他の人がすでに作り上げているシナリオを完全にコピー」できるだろうか?

 シナリオとは新しいことが全てではない。同じようなテーマ、同じような内容でも、完全に盗作したのでない限りは、そこに必ずあなたが書いたからこそのオリジナリティがあるはずだ。2番煎じ3番煎じどんとこい。寧ろ多くの作品が出ることで、取捨選択の余地が生まれる。
「自分はこんなことをしたい」という気持ちを最後まで信じ切ることが、シナリオ作成において一番重要なことなのである。
 文才とか発想力とかそういう問題ではない。シナリオを思いついた。そこからもう、ペンを握っていようがいなかろうが「シナリオ」は始まっている。

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◆書き連ねる

 それはともかくとして、思いついたネタはそのままにしてはならない。とにかくチラシの裏でもメモでも、後ですぐ見返せる場所にそのネタを書いておく。現代であれば、大抵の人がスマートフォンを所持しているので、スマートフォンのメモ帳にでも書いておけばなお有効だろう。現代社会人であれば、ふとした時にスマートフォンを見るからだ。

 さて、あなたはどのようなシナリオを思いついただろうか? シナリオの本筋に大きく関わるテーマ? 登場するキャラクター? シナリオのギミック? それとも、シナリオの難易度?
 何にせよ、まずそのひとつが決まっている時点で、あなたはシナリオ執筆の第1歩を踏み出したのだ。あとはそこに、たったいま書いたネタから、枝を生やし根を生やし葉っぱをつけていけば、1本のシナリオになるのである。

 

◆あらすじを書く

 ある程度シナリオのイメージができあがったところで、シナリオがどのような場面から、どのような雰囲気でプレイヤーキャラクターを巻き込んで始まるのか、あらすじを書いておく。あらすじは、ネタバレにならない範囲で、プレイヤーがシナリオの内容が自分に合ったものなのかを知るために注視するところだ。ここはしっかりと、どのような雰囲気で、どのようなシナリオで、何がテーマなのかを分かりやすく書いておくのが良い。

 いや、どんな感じで書けばいいんだよ、と思った方はとりあえず映画館にでも行って、無料で配られている映画のチラシで面白そうなものをいくつか取ってくるといい。たいていのチラシには映画のあらすじが書かれているだろう。あれを参考に書きあげるのだ。
 外に出るのが面倒ならば、ルールブックが手元にあるだろう。公式シナリオにご丁寧にあらすじやトレーラーなるものが書かれているなら、それと自分の中にあるシナリオの導入部分の説明を混ぜて作ればいい。

 あらすじの締めにおすすめなのは、続いていくことを感じさせる「引き」のあるあらすじだ。「どうなる、○○!」とか「○○の命運は、あなたたちに託された!」とか、そういうやつだ。

 

◆シナリオ概要を書く

 だいたいどのくらいの長さで、何人で遊ぶのを想定したシナリオで、シナリオの中にはどんな要素が含まれていて、シナリオを作るのに使用したルールブック、あるいは関連サプリメントは何なのか(時折、基本ルールブックに加えて、『サプリメント』という追加データブックなどを使用しているシナリオを見たことがないだろうか)……そのあたりをあらすじの近くに書いておく。

 これはシナリオをプレイする人が、シナリオの概要が自分のニーズに合っていて、プレイできるものなのかを確かめるために見る。

 例えば、ほんの1時間程度で終わるような短いシナリオを探している人もいるだろう。そんな人はこのシナリオ概要を見て、自分の希望に合っているか、許容範囲であるかを確かめるはずだ。

 この辺りはシナリオを楽しんでくれる人と巡り合うために必要な情報なので、しっかりと書いておくことをお勧めする。

 

◆シナリオを書き始める

「シナリオを書き始める」の順番を後に書いているが、別にあらすじやシナリオ概要を作る前にシナリオを書き始めても構わない。
 ただ、ひとまず短く済むところから始めて、シナリオのイメージを固めていく作業は、シナリオの内容がまだ漠然としている段階では有効であるため、この順番としている。

 ついに、シナリオの全体像を作っていく作業に入る。これは小説の執筆作業でいうところの、「プロット~執筆」の段階である。
 それぞれの場面が切り替わるような、シーン制を導入しているシステムなら、まず入れる予定の各シーンを、縦に十分な間を空けて記入する。物語のプロットでいう「起承転結」だ。「導入シーン」「ミドルシーン1、ミドルシーン2…」「クライマックスシーン」「エンディングシーン」といったふうに。

 そして、あらすじに書いた導入部分をそのままシナリオの「導入」シーンの欄に書く。その後、プレイヤーキャラクターがシナリオの中の事件に巻き込まれてからどうなるのかをその後のシーンに埋めていけば、シナリオの大体の形ができていく。

 

 シーン制ではないクトゥルフ神話TRPGも、ぶっちゃけ構成自体は「起承転結」だ。
 探索者が何かに巻き込まれ(起)、すったもんだし(承)、何とか危険な状況に抗って(転)、生き残る、あるいは死ぬ、発狂する(結)。

 だからCoCのシナリオもとりあえず、小説のプロットを書くのと同じで「起」「承」「転」「結」と間を開けて並べて、「起」に探索者が事件に巻き込まれるまでを書き、「承」に探索者が事件に関する情報収集をするところを書き、「転」に探索者が生き残るための戦いに身を投じるところを書き、「結」に「承」と「転」での探索者の動きを受けてどのような結末になったのかを書けばいい。

「転」が思い浮かばない? 何もおかしいことではない。「承」から「結」に繋げられるのではないだろうか? それなら全く問題ないのだ。

 そして、この段階では、「○○が××した」「ここで○○を登場させる」といった、簡素な文で構わない。これは後の段階で文章を整えて、それっぽくすればいいのだから。

 

◆整える

 ある程度できあがったら、今度は文章の形を整えていく。よくあるような語り口調で、場面の描写を入れ、探索できる場所の描写を入れる。
 公式シナリオがあるのなら、それを参考に書きあげればだいたい正解だろう。
 公式シナリオは、システムの雰囲気や判定形式などに合わせて整えられている。それをマネしておけば、勝手に「読みやすい」シナリオになるはずだ。……ある程度は。

 

◆シナリオ完成

 シナリオが完成したら、できれば自分でGMをやって、ミスや修正した方がいい箇所がないかを確かめる。

 何度か読み返して誤字や脱字くらいは直せるかもしれないが、シナリオの難易度調整なんかは、やはりテストプレイしてみなくては分からない。

*1:そもそも思いつくことがないけれどシナリオを書きたいというときは、公式シナリオを眺めて、どこかを自分なりにアレンジできるかを考える。公式シナリオが沢山あるのなら、それぞれの要素を混ぜても良い。シナリオ作成の良い練習になるため、おすすめだ。