温森おかゆの雑文倉庫

主にTRPGについての個人的集積。

初対面セッションの使用キャラの注意点

 オンラインセッションの募集を行うサイトや、コンベンションなどでは、初対面同士でセッションを行うことは何も珍しいことではない。かつ、TRPGというゲームの魅力的な特色として、やりたいと思ったキャラクター設定をセッションで使用することができる。

 だが、だからこそ、初対面の相手がいる場面では、キャラクターの設定に多少気を遣うことをおすすめしたい。
 読者諸氏もTRPGリプレイ動画などをよくご覧になるのなら、どこかでご存じかもしれないが、そもそも「初対面が集まる場で、顔見知りでないと許してもらえないような設定を持ち込むのは賢い選択ではない」とされる。

 この辺りを履き違えたために、プレイヤーとしての印象を落としてしまう人はこれまで多く見られたので、残念に思う。悪気がなくても印象は悪いという事実を、ここではっきりとさせておかねばなるまい。
 TRPGリプレイ動画では、独特な設定を持つPCや、若干ユニークすぎる言動を繰り返すキャラクターもいるが、それらは身内と呼べるような間柄の相手の「お約束」が確立されている環境であるから許されていることだ。初対面の相手が集まるセッションに持ち込もうものなら則・門前払いされても文句は言えない代物である。相当ノリのいいメンツかどうかの洞察は必須となる。

 以降の項目で、協力型TRPGに参加する場合にキャラクターの設定項目を考える時点で気を付けた方が良いことを、過剰書きで説明させていただこう。
 なお、以下の項目をクリアしたとしても「そういうキャラクターはやめて欲しい」と言われることもあると思われるが、その際は素直に引き下がり、またの機会にキャラクターシートを保留とすることをお忘れなきようお願いする。

【キャラクター設定の注意点】

◆まず客観的に見て、自分のPCが好感の持てるものなのか考えてみる

 キャラクターを作成する前でも後でも構わないが、自分の想定しているキャラクターが、“初対面の相手がいるセッションで実際に動いた場合に、相手に多少好感を持ってもらえる出来になるのか”というところを考えた方がいい。参加するセッションがもしシノビガミの対立型やらパラノイアなんかだった場合、そんな必要はないだろうが、協力型となると話は別となる。
 PCがお互いに協力して事件に立ち向かっていくというのに、PCから見てもPLから見ても「こんな奴と何で協力しているのか分からない」相手にしてしまったら、セッションの空気も冷え込むだろう。
 自分の作成したキャラクターを一旦客観的に見て、「ちょっと腹立つな……」とか「この子はちゃんと他の人と協力できるんだろうか」と思ったら、その時点で赤信号なので、そのキャラに引っ張られて大事故を起こす前に、可愛げのひとつでも生やしておくことを推奨する。
 初対面の相手が居るセッションに出すキャラクターは、もちろん初対面の相手に見せても恥ずかしくない性格だと思う程度にしたほうがよい。「キャラクターの身だしなみチェック」のようなものだ。

 

◆無機物PC、動物PCは可能なシステムでやること

 言葉が通じるかはなはだ不安な動物だったり、果てはそもそも意志を持って動いているのか不明な無機物が、しれっとクトゥルフ神話TRPGの探索者として動いていたり、喋っていたり……というのは、TRPGリプレイ動画ではよく見る光景である。私も、そういったユニークな発想は嫌いではない。
 ただし、お互い初めての関係で出すにはちょっと無謀すぎる。悪ノリが好きな「ルーニー」気質の人間だと勘違いされてしまうと、対人的に大きな損失だ。
 クトゥルフ神話TRPGで使用できるプレイヤーキャラクターは、原則「人間」である。動物や無機物PCがやりたいのなら、信頼を積み重ねてそんな無茶を許してもらえるように頑張ってみるか、そもそも無機物PCをしたところで誰も気にしないようなシステムをするとよい。

 私が知る限り、動物PC、無機物PCができるシステムは……「マモノスクランブル」やサプリメントを導入したダブルクロス3rdあたりだろうか。
 マモノスクランブルはそもそもが人外「マモノ」をPCとして扱えるシステムなので、カメラの頭を持ったスーツの男から、最悪リザードマンやモノの付喪神そのものをやっても誰も気にしない。ナラティブ系システムにはなるが、システムもカンタンなので初心者にもお勧めできる。

 

ハンドアウトがある場合はよく見て従うこと

 ハンドアウトに「あなたはどこにでも居る男子高校生で……」と、PCの細かい設定まで書いてあって、それはそれとして自分は「どこにでもいるバイク乗りのおじさん」がしたい、というのであれば、GMに相談することで合わせてもらえる可能性はある。その結果、うら若きヒロインに逆ナンかけられるおじさんが爆誕したりしたが。(1敗)
 ハンドアウトというのは、PCがシナリオ中に関わる事件に対するモチベーションや、きっかけを記したものである。ちょっと魔が差すなどして、そのハンドアウトから外れたキャラクターにしてみたい……という欲望は私もよくわかる。たまーにやりたくはなる。ただし、「ハンドアウトに従わないキャラクター作成は最も早い段階でのシナリオブレイク」とも言えるケースになりかねない。
 そういうわけで、ハンドアウトに従いたくない項目が混じっていると感じた時は、まずGMに「この設定をこうしたいのですが、変えていい項目ですか?」と相談してからキャラクターシートを作った方が良い。ハンドアウトに書いていない内容で、キャラクターシートに書いてある項目がGMの知るシナリオの内容と喧嘩してしまうという話なら……事故である。その場合も、しっかりとGMと相談することで解決できるだろう。

 

◆可愛げは3割増しくらいで表現する

ツンデレ」の加減を間違えてついに他のPCに嫌われてしまった、なんて事故は多い。事故か否かはさておき、折角楽しいはずのセッションが冷え切ってしまうというのは誰しも避けたいものなのだ。それは、誰かひとりが思っていることではなく、セッションに参加する全員の望みだろう。
 だからこそ、独りよがりで「自分がやりたいことに相手を付き合わせる」ようなキャラクターにしてはいけない。ツンデレで言うなら、ツンデレがやりたいという気持ちに相手を付き合わせて、相手のPCに罵詈雑言浴びせかけていいはずはないのである。
 ではツンデレという、嫌われかねないキャラクターをしてはいけないのか、と言われると、そう言うこともない。その辺りはちゃんと相談し、かつ相手に不快感を抱かせなければセーフなのである。ツンデレと一口に言っても、甘さの加減はチョコレートくらい多様化しているはずだ。要するにビターチョコレートではなく、ホワイトチョコレートくらい甘くしてしまえばいい。
 とはいえ「そのキャラクターはやめて」と言われたら素直に引き下がることは前提として、だ。

 

【特殊なキャラクターを持ち込む際の相談】

 では、初対面の相手がいるセッションで、対人を苦手とするようなキャラクターを持ち込んではならないのか、と言われると、私もその辺りははっきりと「ダメ」と断言できないところである。
 それはまさに「セッションによる」ところが大きく、やり方次第で許してもらえる可能性もあるのだ。
 それでも、対人に不安を持つキャラクターではセッション中に事故を起こしやすいのは確かなのである。
 もし、初対面の相手がいるセッションでどうしてもそういった特殊なキャラクターを使いたいと思っている時は、それなりの工夫が必要だ。

◆まず相談すること

 初対面の相手に、「こんなキャラクターなのですが良いですか?」と相談するのは勇気が要る。ただ、それは相手も同じことで、本当は相手を無差別に煽ったり、そもそも会話できるかすら不安なキャラクターを平然と持ち込まれて、「しょうじき不安です」と相談できないのである。その点は、キャラクターを持ち込む側が最大限配慮するべきことであると私は思う。
 対人に不安を残すキャラクターを持ち込む際は、「この子はこういった設定になりましたが、プレイヤー側から精いっぱいフォローを入れ、仲間に不快感を抱かせないように努力します」と、そのキャラクターが参加するにあたっての解決策を自ら提示することで、安心して受け入れてもらえる可能性が上がる。仲間として受け入れることに不安が残るキャラクターであることを自覚し、自らフォローを入れる気があるのなら、不安は払しょくされることだろう。
「そんなことは面倒くさい」「そんなことしたくない」と思ったのなら、そのキャラクターシートは事故を起こす前にお蔵入りにしておくことが一番安全だ。

 

◆プレイヤー視点からプレイヤーキャラクターにフォローを入れること

 セッション中にも勿論プレイヤーから自分のプレイヤーキャラクターに最大限のフォローを入れるべきである。キャラクターは「貴様らに協力などしない」と言っているが、プレイヤーとしては「情報は共有し、後で合流します」とメタ的フォローを入れるのを忘れないことだ。
 もちろん、フォローを入れれば何でもしていいというわけではない。

「すみません、悪気はないんです」とプレイヤーが言ってきたとしても、キャラクターが罵詈雑言を浴びせかけてきたら誰だって不愉快である。自由だからと言って、対人で遊んでいる場面であることは忘れてはならない。
 個人の許容範囲というものもある、自分はこの程度で十分協力できる性格だと判断していても、他人がそうとは限らない。多少の茶目っ気、多少のツン態度ですら、人によっては拒否反応を起こすこともありえるので、初対面相手に導入するキャラクターとして難しいタイプを選ぶ際は、特に注意が必要だ。