これはよく勘違いをされがちなのだが、TRPGのオンラインセッションをするからには絵が描けないといけないとか、シナリオがを作れないといけないとか、GMが上手にできなければいけないとか……そういった強迫観念じみた先入観をボヤく方をたびたび見かけるが、私に言わせてみればそんな法はない。
ルールブックにも欠片も書いていないことを、わざわざ増やす必要はなかろう。
正直な話、私だってオンラインセッションをやる上でココフォリア部屋の準備をするときに、前景と背景の画像を切り替えて多少見た目は整えているけれど、本当はそれすらメンドクサイ。せいぜいココフォリアのデフォルトコマが背景と同化しないように、多少色のあるバックグラウンドカラーにしているつもりであるだけで、手軽に没入感を増すことができる便利な機能とはいえ、面倒くささが先に立つことはある。このあたりは性格なのだろう。ソロで仮回ししている時なんか背景は固定でやっているくらいである。
これを苦もなくできる人に関しては感嘆を禁じ得ない……さて。
TRPGをプレイするうえで、最低限必要なことは大抵、ルールブックにすべて書いてあると言ってよい。
モノによってはマナーにまで手を広げて説明してくれているものもある。
今回は、ルールブックに書いてある枠を少し外れるかもしれない幅広い範囲で、TRPGをプレイするにあたってプレイヤーに必要な素質、素養をまとめていこうと思っている。
……これをまとめると「要は職場で必要なスキルだな?」と思わないでもない。なので要するに、いち社会人、あるいは未来のいち社会人として必要なスキルと大体同じである、と思っていただいて構わないだろう。
◆レスポンスの速さ
日程調整、キャラクターシートの提出、確認、セッション中の対話、相談。
セッション内外で必ず発生する、プレイヤー同士の会話。これにはなるべく迅速に反応できるようにしておくことが望ましい。なにも日常のビジネス関係のメール返信を後回しにして、TRPG関係の相談にこまめに参加できるようにしろとは言わない。ただし、億劫だからといって3日4日放置するのはいただけない。
◆礼儀
まず、他者への思いやりの先に立つのが礼儀である。いたって形式的なものであれ、マナーが守れていれば大抵の小さな問題は起こらないものだ。オンラインセッションでは、年齢も住所も名前も顔も分からない相手同士とセッションを行う場合が多い。そこには、年功序列といったものは仮にしか存在しない。
相手がいかに若く見えようとも、礼儀を忘れてはいけない。相手といかに親しくなろうとも、相手を尊重し続けることができれば、中身のない形式的なものであれ、とりあえず小さな地雷をいちいち踏み抜くことは少ないはずだ。
◆おもいやり
もはや飽きるほどに言い続けるが、TRPGの一番重要かつ一番むずかしい点として、他者への思いやりを持ってプレイすることが挙げられる。これはTRPGのルールブックにも、マナーとしてそれぞれシステムごとに違う形で説明されていることもあるが、「自分がされて嫌なことは人にもするな」とか、「相手が嫌がることをするな」とかいったごくごく基本的な共感力、思いやりがなくては、TRPGは成り立たない。
相手に負担をかけて当然のような顔をしていては、遊び相手もゲームも長くは続かない。実のところ、この要素をクリアできる人間はそうそう出会えるものではないため、出会えた場合は、その人との関係をいかに大事にするかがキモでもある。
◆シナリオ通りに回すだけでいい
プレイヤーの突飛な提案をすんなり飲んで、その場でシナリオを調整し、スマートにいなす……そんなゲームマスタースキルは憧れるものだが、できなかったからといって何を困ることがあろうか。
◆シナリオは作れなくてもいい、作ったとしてハイクオリティである必要はない
よほどマイナーなシステムでもなければ、ある程度のシステムはネット上にいくらでも同人シナリオがあるはずだ。TRPGとはそういうもので、ネットが普及した現代、昔よりも個人の作ったシナリオの共有がやりやすくなっている。
いち個人が、公式シナリオをやり尽くした末に何とか頭をひねってシナリオを作り出す……そんな時代ではなくなったのである。少し探せばどこかの誰かが書いたハイクオリティなシナリオがネットに投稿されている……それを一つ一つ丁寧に回す。それだけで十分ではないか。
自分の考えたオリジナルシナリオを作っても良い。ただ、そこで「クオリティが高くなくてはならない」と思っていると筆が止まるか、努力があらぬ方向に向かってしまって逆に不完全燃焼を起こすので、おすすめはしない。
◆絵は描けなくてもいい
TRPGはもともと、人と人がダイスや筆記用具を持ち寄ってプレイする、オフラインセッションの形式から始まったゲームである。小道具として実際の地図や、マメな人はNPCのビジュアルを見せてくれることもあるが、大抵オフラインセッションでいちいちA4用紙に印刷したNPCの自作画像、背景画像なんかを用意してくれる人は少ない。そんなことをしていたらコストも時間も労力もかかる。
絵が描けるというのは非凡な才能だが、TRPGはそんなものを持っていないと参加できない高尚な趣味でもないのである。
自作画というのはしょせん自己満足の範囲であるから、どうせできなくたっていい。できるかできないかでありもしない優劣をつけるのはナンセンスというものだ。世の中にはAI作画やらPicrewやら、いくらでも無料で立ち絵素材を作る方法はあるのだ。どのような方法で立ち絵を用意するにしろ、プレイヤーキャラクターのアイコンとして使用するぶんには、それらの価値はすべからく平等である。プレイヤーキャラクター自体が常に平等に扱われるべきなのと一緒だ。
……欲を言うとココフォリアの黒いデフォルトコマでは背景に溶け込んでしまうので、最悪白無地にキャラの名前だけ書いてる素材でもはっつけて頂けたら助かる。私はその程度に考えている。