温森おかゆの雑文倉庫

主にTRPGについての個人的集積。

ハンドアウトはみんなが主役

 実は私は「ハンドアウト」に関して、浅学の身ながら一応意見ある立場の人間である。
 昨今、ネットのTRPG界隈では「虚無ハンドアウト」と言われて、まるでNPCのような扱いを受けるハンドアウトがあるという話が見られ始めたり、知らないうちにネット上では「HOは主人公ポジションで主役だから、ラージナンバーは控えるのが基本」という。ハンドアウトに関しての理解の向きが見られたり。そんなのを聞いてちょっと首を傾げているので、今回はこのハンドアウトに関して、持論を少々述べさせていただく。

 これに関しては、おのおの感じるところもあるだろうし、私が間違っていないなどと胸を張って言うつもりもないので、異論は認めるスタンスであることをご了承いただいた上で読んで欲しい。

 

 私は「HO1は『主人公』ではあるかもしれないが、必ずしも『主役』ではない」という考えの向きが強い。

 個人で小説や漫画などにするのであれば、「主人公は主役である」と言った考え方は何も間違っていない。だがTRPGに限って言うのであれば、それこそ「全員が『主役』」となる。

 というのも、TRPGに参加している以上は、全員の条件は同じである。それぞれがそれぞれのストーリーの主役になったつもりで、シナリオに関わってくれるはずだ。例えば、HO1はシナリオではヒロインと関わり、彼女をめぐって敵のボスと深い因縁の元刃を交えると言ったもので、PC1はヒロインや敵のボスと戦うシーンでキャラクターロールプレイが活きてくるだろう。
 対してHO5は、特にヒロインとも、敵のボスとも具体的な因縁はないけれども、とある組織からの依頼で、主人公枠であるPC1が関わっていると思われる事件を調査していく中で、解決には敵のボスを倒す必要があるだろう、ということに気付く、と言った役回りであるとすれば、物語中盤の情報収集の場面などで活躍し、また、PC1と敵のボスとの戦いでも、PC1との利害の一致や、あるいは目的を超えた絆を作って協力するといった立ち回りをすれば、名脇役としてクールに映ることだろう。

 何が言いたいのかというと、いくらHO1が主人公ポジションだから、といって、ラージナンバーHOが遠慮する必要はないということだ。創作物でだって、物語の主人公より人気が出る脇役キャラクターは居る。それになったって、全員同じ条件で時間を作ってシナリオに参加している限り、問題はない。
 TRPGでは全員が当事者であり、自分のPCが可愛くない人間は恐らくいない。中にはPCをただのコマと見ることができる人もいるだろうけれど、ロールプレイをする上では、誰もがスポットライトを浴びる権利があるのである。

 

 ただし、限度というものはある。「ハンドアウトには従わなければならない」。
 つまるところ、例えばヒロインと関わり合い、すれ違いながらも、ヒロインが巻き込まれていく事件の解決のために、敵のボスと戦う……というハンドアウトが与えられたHO1を、PCから奪ってはいけない。
 関わるうちにヒロインに一目惚れして、横恋慕ポジションとしてPC1と仲良く喧嘩しながら競い合うように目的を共有するか、HO1とヒロインの関係を出歯亀したくなったかしてモチベーションに設定するのまではいいが、HO1と関係性が出来上がっているヒロインを略奪するなどして、終盤にHO1が言うはずの「ヒロインは渡さない!」ってセリフを割り込ませてはいけない。

 ハンドアウトを選んだからには、そのハンドアウトの意図するところに従う必要はある。なぜならハンドアウトというものは、セッションの中で、それぞれのハンドアウトを持ったPCたちにそれぞれ「役割(ロール)」を与え、それに沿って物語を演出してもらうための、軽い台本のようなものだからである。ハンドアウトに従えないPCは作ってはいけない。
 結婚式でもあるまいし主人公より目立つなと言うつもりはないが、他者のハンドアウトを略奪するところまでいくと、ただの横暴である。

 

 自分に与えられたハンドアウトに沿った形でカッコつけるのなら、いくらでもカッコつけていい。誰にでもカッコつける権利はあるし、ラージナンバーは得てして「自分からシナリオに関わるモチベーションを見つけてセッションに関わり、積極的に自分の見せ場を作る」ことが期待されるものでもあるから、関わり方が自由なら、どこでカッコつけるかも自由なのだ。そのタイミングを察知する洞察力に優れた人ならば、HO1を食うような勢いで輝くかもしれない。
 私が読んできた公式リプレイでも、印象に残るのはラージナンバーであることが多い。物語で多くスポットライトが当たるキャラクターとは言いにくいが、キャラクター付けが非常に自由であるという特徴を活かして、プレイヤーの独創性に溢れたキャラクターを作成できるからとも言える。

 

 聞きかじった情報ではあるが、「HO1は主人公、主役」と明確に定義づけしているルールブックは多くないそうである。
 ハンドアウトはしなり途中でそれぞれのPCの見せ場をシナリオ側で設定するためのフックであり、シナリオ演出において各々の「役割(ロール)」プレイに役立ててもらうための小さな台本である。それで「スモールナンバーが主役、ラージナンバーが脇役」と明確にシナリオ側で定義づけしてしまったら、上で述べたような「虚無ハンドアウト」になってしまうのだ。そうなってしまうのは遺憾きわまりない。

 加えて、個人的には、「主人公枠がとれなかったから」という理由で落ち込んでモチベーションを落としてほしくない、というGM側としての思いがあるため、「HOがラージナンバーだったからと言って、主役から外れたわけじゃなく、控えて欲しいわけでもない。あなたのPCも大切な登場人物の一人をしてもらう以上、その役割をめいっぱい楽しめますよ」と伝えたいのが本位である。
 なんにせよ折角の仮想だ。私の卓では少なくとも、ハンドアウトの数字など関係なくカッコつけたもん勝ちである。
 他のPCたちとの関わり合いも大切にして、自分のスポットライトの中で燦然と輝く人は、特にカッコイイと思う。