温森おかゆの雑文倉庫

主にTRPGについての個人的集積。

TRPGは気楽にできるゲームではない

 悲しいことに。
 非常に悲しいことに。

 TRPGは無礼講のゲームでは無いし、それゆえTRPGに足を踏み入れた初心者には、厳しいことも言わなければならない。
TRPGという、自由が保証されるゲームであっても『やっていいことと悪いことがある』」と。「無礼講でやりたいならTRPGではなく他のゲームでやったらよろしい」と。
 TRPGは自由に物語を紡いでいけるゲームなのだ、せっかくならそんな世界で自由に羽ばたきたいだろう。大いに理解できる。
 だがその自由に協力してくれるのは結局人であり、その人間も感情がある。何を言われてもされてもニコニコ答えきれる人間というのはこの界隈にすら少ないし、そんな行き過ぎた善意を求めるのは酷と言うものなのだ。

 TRPGとは社交そのものである。
 社交にはルールがある。人間関係には親しき仲にも礼儀ありと言う言葉のとおり、いくつかタブーがある。
 TRPGというゲームが、人と人とが共に作り上げていくという性質を持っている限り、この厳しい現実は不変のものである。

 最近、TRPG初心者について言及したブログを公開した手前、言い出した人間が何の用意もないようでは失礼か、と思い、TRPG自体殆ど初めてで右も左も分からないと言った初心者のために、パワーポイントで説明用のスクリーンをちまちま作成しているのだが、どう考えても最低限説明すべきことをまとめているのに、どう見ても初心者バイバイなレベルで真面目な諸注意ばかりが並んでいて痛い頭を抱えるばかりである。

 だが、「初対面の場でリプレイ動画の真似をしてはいけません」とか「GMの許可がないままダイスを振ってはいけません」といった「ダメ」は必要最低限の事前知識であるが故に、心苦しくもちゃんと説明しなければならないのだ。心を鬼にして打ち込むのである。初心者にダメダメ尽くしで本当に心苦しいが、ダメなことはどうしても知ってもらわなければならないがゆえに。
 スマートフォンの契約前に聞かされる注意のようなものだ。アレと同じように聞き流されても困るのだが。

 TRPG初心者を招き入れて、プラットフォームとして知識を与え、自由なTRPGの世界に送り出すには、教授者としての責任がある。
 甘い言葉だけ言って後で後悔させるのは詐欺師のやることだ。
「説明を受けたので大丈夫です!」と言わせてダメダメだったのでは、私というプラットフォームは初心者と信じて招き入れた経験者の面目を間接的に潰しかねない。
 とまあ、いろいろとボヤいてきたが、要するにこれからTRPGを始めたいと志すTRPG初心者の方々には、最初はダメダメ尽くしでつまらないこともいくらかあるだろうが、それはひとえに「全員でゲームを楽しむため」であるということをご理解いただきたいということである。
 甘い言葉だけで誘いたいところを、そこをあえて耐えて、「無礼講でやりたいのならTRPGじゃなく他の場所でやったらよろしい」くらいの厳しさをもって説明しているのである。

 事実、大抵の卓では必ず最低限のマナーが求められる。ご自分で卓を立てて無礼講出やっていただく分には一向に構わないが、よその卓は要するによその家と同じようなものだ。
「ヨソはヨソ、ウチはウチ」である。ウチのルールがヨソで通用することは少ない。
 そこのところをウチで染み付いたクセのせいで失敗しないように、私は初心者の方にTRPGについて説明する時には、大抵の「ヨソ」のマナーを教えている。