温森おかゆの雑文倉庫

主にTRPGについての個人的集積。

老者はこれを安んじ、朋友はこれを信じ、少者はこれを懐けん

 論語には、

「老者はこれを安んじ、朋友はこれを信じ、少者はこれを懐けん」
という言葉がある。

「老人には安心され、友人には信頼され、若者には慕われること」
という、意味である。

 

 これはこの言葉を言った孔子という人物が、弟子たちに「先生の理想の人物像をお聞かせください」と言われた際に放った言葉だそうだ。
 これが紀元前400年ほど前の人間の言葉とは、いやはや恐れ入る。
 実際このような人間んが数千年ののち、つまり現代に居るかと考えてみればなおのこと恐れ入る。人間とは悲しいかな、思った以上に学習能力のない動物のようである。

 考えてみれば、ごちゃごちゃ考えなくても、老人には安心されて、友人には信頼されて、若者には慕われる。そういう人物であれば、確かに他には何も要らないだろう。
 単純明快な基準である。

 

 上記の言葉の前に、孔子は弟子たちに「各人の志を言ってごらん」と促しているという描写がある。それを受けた弟子たちは、言われた通り、おのおのの志しを先生に語ってみせたそうである。

 ある弟子は「車や馬、衣や外套などの資産を友と分かち合い、友が衣を破っても恨み言を言わないことです」

 ある弟子は「善を行っても誇ることなく、人に苦労をかけないことです」……と、かたったそうな。

 このような話を聞いた孔子は、のちに弟子に聞き返されて、「老者はこれを安んじ、朋友はこれを信じ、少者はこれを懐けん」と、簡潔に返したのだという。
 弟子たちはこの師の言葉を聞いて、一体何を思っただろう。
 数千年ののちにまでこの一連のできごとが残されて伝わっているところを見るに──当時の弟子の感動が偲ばれる。

 

「老者はこれを安んじ、朋友はこれを信じ、少者はこれを懐けん」

……人としてこうでありたいものだと、私も深く頷く言葉だ。